裏家庭科プロジェクト

 2021年8月から、裏家庭科プロジェクトを行なっておりました。そもそもの発端は展示のために受講したフードロスの講義での「家庭からの生ゴミを減らせば、ゴミ焼却エネルギーがガクンと落ちます」という話。それを聞いた私は「生ゴミは水分を大量に含むので燃えにくい」って学校での実験で組み込めば結構意識が変わるじゃん!と思ったのです。でも、やろうとすると、一体、理科なのか?と疑問に思ったことがスタート。強いていえば、家庭科かなと思って、高校の家庭科の教科書を購入して30年ぶりに熟読してみました。

 今の家庭科(特に家庭基礎)は、びっくりするほど良くできていて、こういうこと身につけた方が、男女問わず、社会が豊かになるのでは?と思うことしきりでした。家庭科の先生のお話を伺うと、入試科目に無いので生徒のやる気を引き出すのが難しい、最低限で済ませる、他の科目に読み替える、などの傾向が強いようです(桜蔭や浅野は割と力を入れている模様。素敵!)。「家庭」って別に男女問わずですが、家庭科=良妻賢母教育のイメージがあるのかも・・・と感じたのも、教科書の視点でした。当たり前なのですが、家庭の中から全てのことが書かれています。性別に関わらず、感情移入しにくい(興味を持ちにくい)だろうなと。視点を変えれば、家庭には社会のさまざまな産業の結果が入ってきているわけで、実は多くの仕事は「生活が便利なように、うまく行くようにある」と考えることもできます。全て社会の側からの視点で家庭科の内容を伝えれば良いのかも!?と思ったのです。ですので「家庭科プロジェクト」です。

 壮大なプロジェクトすぎるので、まずは実習を作ってみようと有志のメンバーで始めました。そして、先ほど書いた通り、実習案を作成していくと、産業紹介(社会の仕組み紹介?)の側面も強いことに気が付きます。これは高校生にとっては、学部紹介にもつながります。理科=理学部、社会・国語・英語=文学部など、授業科目からイメージしやすい学部って少ない。教育学部は先生という身近な例がありますが、農学部、工学部、商学部、法学部、、、など、社会とどう繋がっているのかなど、身近な例を増やす良い教材です。

 夏に2度ほど実習を所沢北高等学校で実施させていただきました。食べるから広がるアレコレと題して、3部構成になっています。1:手羽先、手羽中、手羽元を翼の形に戻す、2:次にそれを食べる(デザートのスイカ付き)、3:紙と鳥の骨とスイカの皮を実際バーナーで燃やす。

1:生物学から始まり→家畜化→流通→狩猟(法律)

2:食べ方の違い

3:ゴミの焼却炉の仕組み、捨て方のルールのあれこれ、フードロスを減らす取り組み紹介

と講義を挟みつつ進めます。

手羽をどこまで食べた??

 これの野菜バージョンと魚バージョンもあるのですが、とりあえず肉バージョンを完成させて、2回ほど実施しました。前後にアンケートも取り、反応もみています。生徒さん達は手羽から始まり、普段とは違った話とどんどんつながるので、刺激はあるようです。西日本新聞社が刊行している『食卓の向こう側』というシリーズにも企画途中で出会い、同じ気持ち(微妙に違うかも!?)で伝えようとしているなぁと思いました。

 誰に頼まれた訳でもなく始めたプロジェクトでしたが、有志というのはなかなかに難しい。高校の先生はそもそも激務。生徒にいろいろと経験させてあげたいと行動している先生ほど、時間が取れないものなんだなぁと実感しました。大切なことではあると思うので、いっそのこと勝手に教科書を作ってしまえば良いのかな、とか、私が家庭科の教員免許とりにいくか!?など続けるために考えたりもしましたし、世知辛いですが、資金はどうするんだ?と思ったりも。続けるためには、もっと縁が繋がっていかないと難しいですし、場所も必要だなぁと、しばらくは休眠しようと思っています。そうでなくても最近の生徒さんは忙しいので、そんな生徒さんを巻き込んでやるほどにはこちらの熱意と信念が不足しているかもしれないなぁと思った次第です。

この記事を書いた人

Kudo Mitsuko