これまでのしごと紹介(山岸)

大学、研究館、研究所、そして教育機関と、さまざまな場面・さまざまな立場で生命科学と付き合ってきました。現在は研究広報として、生命科学の最新研究について書くことと話すことが主な仕事ですが、生命科学をテーマにした制作物にも時々関わります。

プレスリリースについて

 近年、多くの大学、研究所が研究成果のプレスリリースを行うようになりました。プレスリリースの様式は機関によってさまざまですが、研究の意義と成果の価値をバランス良く伝えるために、どこも工夫(苦労)しているはずです。機関広報は原稿の校閲・校正を担当することが多いと思いますが、時には全体構成から研究者と一緒に考えることもあります。研究者とのコミュニケーションで、研究者のアタマの中を覗くことができるのは、研究広報の醍醐味の一つだと思っています。

講演・授業

 研究者が自分の研究について、楽しんで話してもらう企画ができれば最高ですね。ただ、研究に勤しむ研究者にそう何度もお願いできるわけでもありません。特別な機会は特別なイベントのためにとっておいて、日常的な見学者対応は広報担当が行うことが多いです。研究しているわけでもない人間が研究について話すことは、研究者の代理を務めるだけでしょうか? 個別研究の具体、詳細を研究者のように話すのではなく、やや引いた、俯瞰的な視点(背景)から研究の話をするのも大事なことです。私の実践については、こちらをご覧ください。

ディスプレイ、グッズ

 「興味のない人にどう関心を持ってもらうか」。科学に限らず、あらゆる(マイナーな)分野に存在する課題でしょうか。「なぜ関心を持ってもらう必要があるのか」という根本的な問いはひとまず置いておいて、例えば学会のブース(研究のポスター発表でも)に似たような展示が並んでいると、内容が良くても何か「惹く」ものがないと気づいてすらもらえないかも。そういう時に、ちょっと変わった手法で研究紹介をして注目を集めることができれば、知って欲しい人「にも」届く可能性が高まります。逆に、多くの人の目を引いても、知って欲しい人にそっぽをむかれれば、それはうまい方法ではなかったということになります。

Yamagishi_理研

半透明のマネキンをスクリーンにして、実際の臨床分子イメージング画像をリアプロジェクションで投影する手作りのディスプレイ・システム。学会会場などで結構ウケました。

展示

 まとまったスペースと費用と時間をかけての展示制作は、そうそう機会があるわけではありません。私は幸運にも、BRHで2つの展示を企画することができました。特に、一部屋丸ごと使った「ものみなひとつの卵から 展」(2008年)は、進化、発生、生態(Evo-Devo-Eco)をテーマにした新規展示という難題に、相当悩みました。いろいろな動物の卵の実物を並べる、というアイデアは最初に考えましたが、それをどう並べるのか。中村桂子館長に何度もダメ出しをいただきながら、動物の「分類」と、卵が産み落とされる「環境」で整理することを思いついたときは、目の前が拓けた思いでした。動物を34の門(グループ)に分けたとき、全てのグループは、水の中で卵を生む種を必ず含みます。そのうち、陸上にも産卵できるのは8グループ。母胎内での発生を経て出産する1グループ。このパネルを中心に、展示室を構成しました。

 なおこの展示をきっかけに、たまごをテーマにした図鑑、絵本の監修依頼が舞い込みました。編集者との打ち合わせで、「“家の中のたまご”というページを作って、ヤモリとかゴキブリの卵を取り上げるのはどうですかっ!」と提案したのですが、やんわり却下されました。。。

この記事を書いた人

Yamagishi Atsushi