大澤省三先生を偲ぶ

大澤省三先生を偲ぶシンポジウム(主催:JT生命誌研究館・昆虫DNA研究会)に参加しました。

大澤先生は、分子生物学者。JT生命誌研究館時代からお世話になりました。進行中の研究が身近にあり、先生と研究の最先端に直に接することができたことは、Science Communication & Production の最高の経験でした。

SiCPでは、大澤先生への感謝の印として、今回のシンポジウムを記念したクリアファイル・ステッカー(デザイン:北地直子)、オブジェ「針金マイマイカブリ」(作:安西央)を制作。

・クリアファイル・ステッカーデザインは、『DNAでたどるオサムシの系統と進化』(大澤省三, 蘇智慧, 井村有希 著, 2002, 哲学書房)の表紙のオマージュとしました。

当時私は、地上を歩いて広がりながら多様化したオサムシの歴史をDNAからたどっていたら地球の歴史までわかった、というオサムシ研究のイメージを、オサムシ・ミトコンドリアDNA・地球の緯度経度を重ねた図案で表したのですが、今回はシンプルに、ミトコンドリアDNAの輪の中に、通称(?)オオサワイ(クビナガモドキ Shenocoptolabrus osawai )のシルエットのみ。しかし改めてその輪には、地球の輪、世界中のオサムシ研究者の輪、先生から広がった大きな波紋、平和の和への思いを込めて、大澤先生の『虫から始まり虫に終わる』研究人生の完遂に敬意を表すものであります。

・針金マイマイカブリは、オサムシの形の美しさを引き立てる繊細な造形作品。

JT生命誌研究館で大澤先生が率いたオサムシ研究はマイマイカブリを抜きには語れません。日本列島の形成史と、DNA解析で明らかになった系統分化との関係。大澤先生がまだまだ追究しようとされていた、後翅の退化の問題。種の定義とは。昆虫の進化の不思議を、針金マイマイカブリに託しました。

この記事を書いた人

Kitaji Naoko