東大駒場博物館にて展示

7月26日から5年ぶりに展示を作って東大駒場キャンパスにある駒場博物館にて9月10日まで展示を開催しております。二部構成(おまけを加えると三部?)になっています。

サイエンスコミュニケーション作品の展示

 一つは、2017年から東京大学農学部で開講しているサイエンスコミュニケーション演習の5年間の優秀作品の展示です。この講義は女子美術大学との共同で行っています。講義成立がそもそも難しく、双方の大学の先生方のご協力でようやく成立しています。科学を表現し続けた自分が大学で何を伝えられるのか、と自分に問うた時、実際にやってみて得られるものを提供したい(自分自身がそうだったこともあり)と思う内容なので、続けていますが、立ち止まって考えようと思う意味も込めて展示しました。改めて、過去作品を見ると、見えない概念、ミクロのもの、など表現手法自体の発明?発見もあり、私自身、学ぶことがたくさんあったなぁと思いました。

 昨年の講義での「畜産を続けるべきか?」というテーマでの作品は私の中では、人に伝えるという形では、これは決定打、という表現が出てきました。ぜひ足をお運びください。賛否両論、複雑すぎて考えにくいテーマを提示するには、最高!なので、将来、ずらっと社会問題の提示にこの手法でやってみたいです。

学生さんたちに伝えたい内容は、背景の全く異なる人とのコミュニケーション、そしてそれが実った時の達成感なのだと思います。社会に出れば、そうやってモノは作られていくものです。そのコツを失敗しても得て欲しいな、と。今の時代、なんでも一人で効率よく完成形までできるコトやモノが多いですが、やっぱり自分の能力が他の人の能力と合わさり、変化していく様って良いなと、時代遅れとは知りつつ思うのでした。

地球医のすすめ

もう一つは、全学自由研究ゼミナール「地球医のすすめ:タネ蒔く農学部有志」の講義を基にした展示です。地球医(農学部の教育プロジェクト)というコンセプトを知ったのは2016年くらい?、単純にそれを聞いた時、素敵だなぁと思いました。理学部育ちの私は、これまで出会った研究者とのやりとりから、農学部は文化が違う・・・と痛感していたので、これは農学部を知る良いチャンスだなとも思ったのでした。そして、その講義に出ること3年。初めのワクワクしたそうなんだ、そういうことなのねーという気持ちから、それをまとめるとなると、全く違って、頭を抱える日々でした。そもそも、若い頃はいわゆるチャンピオンデータを基にした表現を扱っていて、その後、日常的な研究と扱ってきて、今度は講義内容。学術の営みを「巨人の肩の上に座る」などと表現することがありますが、まさに!!講義の内容は、恐ろしい数のこれまでの研究者のデータが圧縮され、さらりと語られます。それをどうやって表現するのか・・・。原案を作ること3回、こんなことは初めて。アプローチが変わるなんてあり得ないのですが、こんなことやっている人は他にいないので、相談するも、誰とも全体像を共有できず、久しぶりにモノができないかもと恐怖でした。思い返せば、生命誌で作った最初の花の生命誌の展示の時もそうだったなぁと、つまり初心に帰れることができていたというのはありがたい話だったのかも。

パネル制作と今年のサイエンスコミュニケーション演習の講義が並行しており、パネル内容を扱う学生さんが受講してくれていたので、その助けを借りる形も想定しながら、作りました。その助けも借りて、個人的には8月10日が最終的には完成形です。隣の華やかな展示に負けているように思えますが、シンプルなパネルの中身は、濃い、です。パネルを写真に撮っている来館者もいらして、だいぶ嬉しかったです。ぜひ、農学部の現在を学びに来てください。そして彼らの目指す世界観を感じていただけたら嬉しいです。

おまけ

最後は、初年次ゼミナール理科「私たちの身近にあるワンパクタンパク質を科学する」という講義の作品。講義に2回くらい参加してコメントさせていただいているのですが、昨年、これもまた、私としては、これは笑顔になるなぁという作品があり、それも展示しております。替え歌なんですが、この権利関係を展示する前に失念しており、ちょっと大変でした。ジャニーズ事務所、JASRAC、さまざまな皆様の温かい支援により実現しました。

最後に

 宣伝していないくせに、ですが、科学を表現する、伝えたいということに興味がある方はぜひ見に来てほしいと思っています。

 なぜなら、女子美の作品の中にはネタ元が隣の地球医に説明されているものが複数あります。伝える際にまずは知ってもらうという意味でのフックに当たる部分と内容が別になっていると考えてください。この表現だと、この内容までしか伝わらないんだ、など、見る側に立って感じる良い体験になるかと思います。

 誰にでも伝わるように・・というのは無理な話で、当然同じものを見ても背景知識に依存して内容は変化してしまいます。どのレベルでもそれなりの発見があるように仕込むのが仕事なわけですが、今回はなかなかに、私が最後までハンドリングしていないものも多く、そういった方向性では至らないところも多いのですが、とにもかくにも、珍妙な空間を演出はできたはず!?

駅からすぐでとても涼しいです。ぜひお近くにお越しの際にはお立ち寄りください。

この記事を書いた人

Kudo Mitsuko